若いころは、ミュージカルが嫌いだった。
ひところは自分も海外の舞台でミュージカルに参加していたにもかかわらず、あのスポットライトを浴びた明るい世界には、なかなか、なじめなかったのだ。
だが、あれから20年が過ぎたある日、テレビで流れるミュージカルのワンシーンを見て、不覚にも目頭を熱くしてしまった。あの歌「ウエストサイド物語(West Side Story)」より’Tonight’の一節だ。
"The world is full of light,..."
「世界は、光あふれる」から続く、
"The world is wild and bright,..."
「世界は、荒々しく輝く」というフレーズ。
そのとき、だらだらと人生を過ごしている自分の精神に、恐ろしい雷のような衝撃を与えたのだった。
そうだ。
世界は輝いているのだ。
自分が暗く沈んでいようと。