女性と酒が好きな私立探偵マーロウは、普段、ユーモアとだらしなさ(?)でシリアスな一面を覆っているのであるが、ごくまれに見せるダークな顔は、ちょっと怖い・・・。一般的には、反骨精神に満ちたタフなイメージが強いと思うのだが、僕が惹きつけられるのは、彼が心に抱えている「虚無感」である。
シリーズ中では名作として名高い「The Long Goodbye(長いお別れ)」と「The Big Sleep(大いなる眠り)」より、その辺を語ったセリフを抜粋してみたい。
星と星の間にある空間くらい虚ろで空しいんだ。
"I was as hollow and empty as the spaces between stars.", Raymond Chandler
かかしのポケット並みに空っぽの人生さ。
"I was as empty of life as a scarecrow's pockets.", Raymond Chandler
なかなか、シャレた表現で、ついついニヤリとしてしまうのだ。
ちなみに、日本語訳版で有名なマーロウのセリフ
「タフでなければ生きていけない。やさしくなければ生きる資格がない。」
に関しての個人的な意見は、原文では'hard'となっている部分に「タフ」という言葉を使った翻訳者のセンスが素敵だと思う。
ラベル:ハードボイルド レイモンド・チャンドラー